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ドクター三原の
ワンポイント・アドバイス
  
「圧力」もろもろ
         

 

 

  
 この世は圧力に満ち満ちている。この地球上に存在している限り生物であろうと無生物であろうと避けられない"圧"、それは大気圧である。

 圧力を測定するのには約束がある。単位面積がその面に直角に受ける力の大きさを圧力と定義する。1ヘクトパスカル(HP)は760mmHgであるから、地球上の物体が1HPの大気圧を受けているとすると、水銀の比重は13.6、従って1平方センチメーター当たり13.6× 76cm=1033.6g/1平方cmとなって地上の万物は全てそれだけの空気の重さを受け止めている。しかも万物にはその重さに応じて万有引力が働いているのだから、この地球上に存在するということは、存在するというだけで全周囲から大気圧を受け、加うるに万有引力で地球の中心へ向かって引っ張られているから、殊に重くて表面積の大きな物体は大変な筈である。つまり人もその法則からは逃れられない。この一つを取ってみても、肥満という状態は存在するだけで大変なことである。

  かつて成人病と呼ばれた病態が現在は生活習慣病と改称され、この用語も大分定着してきた。この用語は包括的でその中にはいくつもの病態・疾患が含まれているが、現在その中心を占めるのが最近mediaによく登場するメタボリック・シンドローム(metabolic syndrome,MS)という考え方である。
その診断の申し合わせの第一はウエスト周囲径(お臍の高さ)で、男性85cm以上、女性90cm以上でそれに加えて血液中の脂質、血圧、血糖の3項目の内、2項目が異常値である場合にMSと診断される。ところが簡便で判りやすいという点からも基本的指標として選ばれたウエスト周囲径をみてお判りのように、この数値では男性が不利である。事実、この基準で統計を取ってみたらMSは男性に有意に多いという結果が出て、この値の見直しがなされそうである。

 欧米へ行かれた方はあちらの肥満者が日本人の比ではないことを実感されると思う。ところが欧米人は既に長らく肥満者の多い社会に慣れてしまったのか、別に異常とも病的とも認識しない風潮がある。日本における肥満者の増加は欧米に比べれば最近の現象であり、勝手な解釈であるが、肥満という生体にとって好ましくない状態が続くと長い間にはDNAがそれを出来るだけ無害なものとしてしまう機構が出来上がってしまうのか、同じ肥満度でも"肥満後進国"の日本では、欧米人におけるよりも遥かに害が大きいことが判ってきた。

  「圧力」から離れてしまったが、わが国の医療機関で平均して最も多い疾患は本態性高血圧症である。本態性とは原因が不明な、の意味であるが、原因は多くの場合、多因子的である。(動脈)血圧とは前述の定義に従えば血流に直角な単位面積が受ける力の大きさ(動圧)である。しかしそのような測定は動物実験でしか出来ないので、決まった動脈を、決まった長さに亘り、決まった圧迫の方法で測定してそれをその部位での血圧と称している。この測定法では血流が血管壁に及ぼす圧(側圧)を測定していることになるが、血管をある部位で急激に圧迫すると、側圧が限りなく動圧に近づくという考えである。全部の該当者が適正な治療を受けているかというと、現実はさにあらず。高血圧症の診断と治療に関する1/2の法則というのがあり、1)全高血圧者の1/2が診断されているに過ぎない2)診断された高血圧者の1/2が治療を受けている 3)治療されている高血圧者の1/2は適正な血圧値になっている かくて全高血圧患者の1/8が適正な状況下にあるに過ぎない のが現状である。

  なんといい加減なと思われるでしょう。だから臨床医学は科学ではないなどと評される。ヒトが対象であるかぎり純粋科学にはなり得ないのではないでしょうか?

 「天の声」という表現があります。これは強者の弱者に対する"圧"以外の何ものでもないと思う。「天」とは「神」であり「神」がそんな不浄な声を発する筈がない。「いじめ」も複雑な因子を含んだ"圧"の絡み合いとみることも可能である。
かくてこの世は様々な"圧"の渦中にあり、極言すれば人生はもろもろの"圧"の相関である。
  

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